Saturday, 14 September 2024, 10-11 AM JST
Speakers: MIURA Tetsuya (Professor, the Department of Comparative Arts, College of Literature, AGU)
「風味表象と環境美学」(Flavor Representations and Environmental Aesthetics)
三浦哲哉・文学部比較芸術学科教授 (MIURA Tetsuya, Professor, Department of Comparative Arts)
ひと皿の料理は、風味(flavor)を媒介し、外部の自然環境や文化的蓄積を表象(represent)する。広く知られていることであり、近年、世界無形文化遺産に認定された「和食」の根本理念でもある。ところで、ここでいう「表象」にはどのような根拠があるのか。「情報を食べている」だけではないと言えるのはどうしてか。どこから先は(恣意的な)「想像」になるのだろうか。「環境」を美的に享受する態度へいかに寄与しうるのか。
本発表では、神経生物学者のゴードン・M・シェファード、精神科医の中井久夫、哲学者のミシェル・セールによる、風味や匂いを主題としたテクストを参照しながら、上述の問いについて考察し、「風味表象」を再考する。
また、私が映画研究者でありながら食と風味を考察の対象としているのは、2011年の原発事故が一つのきっかけである。食をめぐる「科学的認知」と「知覚」と「想像」はときとして混線を起こし、誤った認識をもたらしもする(疑似科学やアンバランスなスピリチュアリズム)。食文化におけるこの三者の適切な協働のありかたはどのようなものかを批判的に考えたい。